Efficacy and tolerability of pharmacological treatments for insomnia in adults: A systematic review and network meta-analysis
Jing-Li Yue, et al.
Sleep Medicine Reviews, Volume 68, 2023, 101746
要約
この論文では、成人の原発性不眠症に対する薬物治療の有効性と忍容性を比較検討するため、ネットワークメタアナリシスを行っています。対象としたのは20種類の薬物で、プラセボ対照または直接比較のランダム化比較試験(RCT)69件を分析し、合計17,319人の患者が含まれています。
オレキシン受容体拮抗薬(ORAs)は、睡眠潜時(SL)、睡眠開始後覚醒時間(WASO)、総睡眠時間(TST)、睡眠効率(SE)のいずれにおいても、ベンゾジアゼピン様薬(Z薬)やプラセボよりも優れていることが示されました。特に、レンボレキサントとダリドレキサントはプラセボと比較してSL、WASO、TSTの改善に効果を発揮し、忍容性も良好でした。一方で、Z薬もSL、WASO、TST、SEの各指標でプラセボより有効性が認められましたが、安全性リスクが高いことが指摘されました。具体的には、ゾルピデムはSL、WASO、TST、SEを改善する効果がある一方、ザレプロンはWASOの改善が劣るとされました。
メラトニン受容体作動薬(MRAs)は入眠困難に対して有効で、安全性も高い可能性が示唆されています。また、ベンゾジアゼピン(BDZs)は主観的な睡眠の質を改善する効果が認められましたが、安全性の面では劣るという評価がなされています。
ORAsは特に睡眠維持困難を抱える患者に対して優れた効果を示す可能性があり、SL(SUCRA値:0.84)、WASO(0.93)、TST(0.86)、SE(0.96)において最高のランキングを記録しています。研究の結果、レンボレキサントはWASO、TST、SEの改善で最も優れた効果を示し、ダリドレキサントはSLで最高のSUCRA値を示しました。
一方で、Z薬では有害事象による中止(AED)のリスクが高く、特にザレプロンとゾルピデムではプラセボと比較してそのリスクが増加していることが明らかになっています。これらの薬物の副作用としては、頭痛、眠気、めまい、幻覚、記憶障害などが報告されています。
この研究の結果は、不眠症の症状に応じた薬剤選択を支援するために、臨床医や患者にとって有用な情報となるでしょう。ただし、長期的な影響については不明な点も多く、さらなる研究が必要とされています。本研究は、不眠症治療における客観的な睡眠指標の重要性を強調するとともに、さまざまな薬物の有効性と安全性を包括的に比較検討した点において大きな意義を持っています。

